2022年(令和4年)診療報酬改定の疑義解釈 その1
- 2022年の診療報酬改定公表後、3⽉31⽇より、順次、疑義解釈が公表されています
- 疑義解釈で公表された膨⼤な情報の中から、【感染対策向上加算1、同2、同3】および【外来感染対策向上加算】に関するQ&Aよりセレクトして解説を加えていきます
- 本資料における医療機関は、「保険医療機関」となります
– Question –
感染対策向上加算について、感染対策向上加算1の届出を行っている医療機関において、連携する感染対策向上加算2又は同3の届出を行っている医療機関が複数ある場合、それぞれの医療機関と個別にカンファレンスを開催する必要がありますか。
(問12)
– Answer –
感染対策向上加算2又は同3の届出を行っている複数の医療機関と合同でカンファレンスを開催して差し支えはありません。それぞれ個別に行うことまでは求められていません。
– Question –
感染対策向上加算2又は同3の届出を行っている医療機関において、連携する感染対策向上加算1の届出を行っている医療機関が複数ある場合、これらの医療機関が主催するカンファレンス全てに参加する必要がありますか。
(問13)
– Answer –
感染対策向上加算1の届出を行っている医療機関が複数ある場合でも、これらの医療機関が主催するカンファレンスに、それぞれ少なくとも年1回以上参加する必要がありますが、これらの医療機関が合同でカンファレンスを主催している場合には、合同開催のカンファレンスに参加することをもって、それぞれの医療機関のカンファレンスに1回ずつ参加したこととして差し支えはありません。
– Question –
外来感染対策向上加算及び感染対策向上加算(1,2及び3)の届出医療機関間の連携について、 連携先との関係が次のような場合に届出は可能ですか。
- 特別の関係(例:開設者/代表者が同一、親族関係にある、等)
- 医療圏や都道府県を越えての連携
(問15)
– Answer –
次の通りです。
- 可能です。
- 医療圏や都道府県を越えて所在する場合であっても、新興感染症の発生時や院内アウトブレイクの発生時等の有事の際に適切に連携することが可能である場合は、届出は可能です。
■【参考】特別の関係にある医療機関とは
当該医療機関等と他の医療機関等の関係が以下のいずれかに該当する場合に、特別の関係にあると認められます
- ・開設者が同一である
- ・ 代表者が同一である
- ・ 当該医療機関等の代表者が、当該他の医療機関等の代表者の親族等である
- ・ 当該医療機関等の理事・監事・評議員その他の役員等のうち、当該他の医療機関等の役員等の親族等の占める割合が3/10を超える場合
- ・ 上記4項目に準ずる場合(人事、資金等の関係を通じて、当該医療機関が、当該他の医療機関の経営方針に対して重要な影響を与えることができると認められる場合に限る)
– Question –
感染対策向上加算について、
- 感染対策向上加算2及び同3の施設基準において、「当該医療機関の一般病床の数が300床未満を標準とする」とされていますが、300床未満とは、医療法上の許可病床数ですか、それとも診療報酬上の届出病床数ですか。
- 一般病床の数が300床未満の医療機関が、感染対策向上加算1の届出を行うことは可能ですか。
(問16)
– Answer –
次の通りです。
- 医療法上の許可病床数です。なお、300床以上である場合であっても、感染対策向上加算2又は同3の施設基準を満たしていれば、届出を行って差し支えありません。
- それは可能です。
■【参考】医療法上の許可病床数及び診療報酬上の届出病床数について
- ・ 許可病床:平成26年7月1日時点で医療法の規定に基づき、医療機関開設地の都道府県知事より開設にあたり使用許可を受けている病床
- ・ 届出病床:地方厚生(支)局へ入院料等の届出を行なっている病床
– Question –
感染対策向上加算1の施設基準において、「他の医療機関(感染対策向上加算1に係る届出を行っている医療機関に限る)と連携し、少なくとも年1回程度、(中略)感染防止対策に関する評価を行い、当該医療機関にその内容を報告すること」とされていますが、
- 複数の医療機関が、同一の医療機関の「感染防止対策に関する評価」を行うことは可能ですか。
- 「感染防止対策に関する評価」は、当該加算に係る感染制御チームが行う必要がありますか。
- 当該評価は対面で実施する必要がありますか。
(問17)
– Answer –
次の通りです。
- 感染対策向上加算1の医療機関は、他の加算1医療機関との相互評価を年1回以上実施することが求められますが、複数医療機関が同一医療機関の評価を行うことは可能です。
- 感染制御チームを構成する職種(医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師)のうち、医師及び看護師を含む2名以上が評価を行います(つまり、医師と看護師は必須です)。
- リアルタイムでの画像を介したコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な機器を用いて実施しても差し支えないとされています。
– Question –
外来感染対策向上加算及び感染対策向上加算の施設基準において、「感染制御チーム(外来感染対策向上加算では、院内感染管理者)により、職員を対象として、少なくとも年2回程度、定期的に院内感染対策に関する研修を行っていること」とされていますが、当該研修は、必ず感染制御チームが講師として行わなければなりませんか。
(問18)
– Answer –
感染制御チームが当該研修を主催している場合は、必ずしも感染制御チームが講師を行う必要はありません。ただし、当該研修は、以下の事項を満たすことが必要であり、最新の知見を共有することが求められます。
- 院内感染対策の基礎的考え方及び具体的方策について、当該医療機関の職員に周知徹底を行うことで、個々の職員の院内感染対策に対する意識を高め、業務を遂行する上での技能の向上等を図るもの
- 当該医療機関の実情に即した内容で、職種横断的な参加の下に行われるもの
- 医療機関全体に共通する院内感染対策に関する内容について、年2回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催する
- 研修の実施内容(開催又は受講日時、出席者、研修項目)について記録する
なお、研修の実施に際して、AMR臨床リファレンスセンターが公開している 「医療従事者向けの資料」を活用することも可能です。
– Question –
サーベイランスへの参加に関して、感染対策向上加算1の施設基準及び同2・3施設における「サーベイランスへ強化加算」の上乗せ算定においては、「院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加していること」、とされていますが
- 対象となるサーベイランスには、JANIS及びJ-SIPHE以外にどのようなものがありますか。
- JANISに参加する場合にあっては、JANISの一部の部門にのみ参加すればよいですか。
(問20)
– Answer –
次の通りです。
- 現時点では、JANIS及びJ-SIPHEとしますが、市区町村以上の規模でJANISの検査部門と同等のサーベイランスが実施されている場合については、当該サーベイランスがJANISと同等であることが分かる資料を添えて厚生労働省に相談してください。
- 少なくともJANISの検査部門に参加している必要があります。なお、診療所についてもJANISの検査部門への参加は可能です。
– Question –
外来感染対策向上加算及び感染対策向上加算(1,2及び3)の施設基準においては、「院内感染防止対策に関する取組事項を掲示していること」とされていますが、具体的にはどのような事項について掲示すればよいでしょうか。
(問21)
– Answer –
以下の内容について掲示してください。
- ・ 院内感染対策に係る基本的な考え方
- ・ 院内感染対策に係る組織体制、業務内容
- ・ 抗菌薬適正使用のための方策
- ・ 他の医療機関等との連携体制
■【参考】厚生労働省 院内感染対策サーベイランス(JANIS)
- ・ 参加医療機関における院内感染の発生状況や、薬剤耐性菌の分離状況及び薬剤耐性菌による感染症の発生状況を調査し、我が国の院内感染の概況を把握し医療現場への院内感染対策に有用な情報の還元等を行うことを目的としています
- ・現在、次の5部門に分けられています
- ・ 検査部門
- ・ 全入院患者部門
- ・ 手術部位感染(SSI)部門
- ・ 集中治療室(ICU)部門
- ・ 新生児集中治療室(NICU)部門
【参考】感染対策連携共通プラットフォーム (J-SIPHE/ジェイサイフ)
- ・ 国立研究開発法人国立国際医療研究センター内の厚生労働省委託事業AMR臨床リファレンスセンターが管理
- ・ 全国の医療機関における感染症診療状況、感染対策への取り組みや構造、医療関連感染の発生状況、主要な細菌や薬剤耐性菌の発生状況及びそれらによる血流感染の発生状況、抗菌薬の使用状況等に関する情報を集約させ、さらに、それらを参加医療機関や参加医療機関の地域等が活用していくことを目的としたシステム
- ・基本情報はすべての参加医療機関で必須の項目、基本情報以外の項目の選択は最低1項目以上が必須、複数の項目を選択することは可能
- ・ 基本情報
- ・ AST関連・感染症診療
- ・ AMU情報
- ・ ICT関連情報
- ・ 医療関連感染情報(医療器具関連感染情報/NICU情報/SSI情報、から任意に選択)
- ・ 微生物・耐性菌関連情報
– Question –
感染対策向上加算1の施設基準において求める看護師の「感染管理に係る適切な研修」には、具体的にはどのようなものがありますか。
(問22)
– Answer –
2022年3月31日の時点では、以下の研修が該当します。
- 日本看護協会の認定看護師教育課程「感染管理」
- 日本看護協会が認定している看護系大学院の「感染症看護」の専門看護師教育課程
- 東京医療保健大学感染制御学教育研究センターが行っている感染症防止対策に係る6か月研修「感染制御実践看護学講座」
– Question –
感染対策向上加算2の施設基準において求める薬剤師及び臨床検査技師の「適切な研修」並びに感染対策向上加算3の施設基準において求める医師及び看護師の「適切な研修」には、具体的にはどのようなものがありますか。
(問23)
– Answer –
2022年3月31日の時点では、厚生労働省の院内感染対策講習会③(受講証書が交付されるものに限る。)が該当します。なお、令和4年度の研修については、令和4年10月頃に配信される予定です。
– Question –
感染対策向上加算1の施設基準において、「抗菌薬適正使用支援チームを組織し、抗菌薬の適正使用の支援に係る業務を行うこと」とされていますが、
- 新たに抗菌薬適正使用支援チームに係る体制を整備する場合であっても届出可能ですか。
- 抗菌薬適正使用支援チームの構成員は、感染制御チームの構成員と兼任することは可能ですか。
- 構成員のうち「3年以上の病院勤務経験を持つ微生物検査にかかわる専任の臨床検査技師」について、院内に細菌検査室がなく、 微生物検査を院外に委託している医療機関においては、微生物検査に係る管理を行っている院内の専任の臨床検査技師は、「微生物検査にかかわる専任の臨床検査技師」に該当すると 考えてよいですか。
(問24)
– Answer –
次の通りです。
- 届出時点で抗菌薬適正使用支援チームに係る体制を整備しておく必要がありますが、整備されていれば届出可能です。
- 可能です。ただし、いずれかの業務の専従である者については、抗菌薬適正使用支援チームの業務及び感染制御チームの業務のみ兼任して実施可能です
【令和4年4月11日の疑義解釈資料の送付について(その3)、問2にて補足及びこれに伴い、「疑義解釈資料の送付について(その1)」(令和4年3月31日事務連絡)の問24②は廃止となります。】 - そのように考えてよいことになっています。
– Question –
外来感染対策向上加算、感染対策向上加算2及び同3の施設基準において、「有事の際の対応を想定した地域連携に係る体制について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った他の医療機関等とあらかじめ協議されていること」とされていますが、
- 「等」にはどのようなものが含まれますか。
- 具体的には、どのようなことを協議することになりますか。また、協議した内容は記録する必要がありますか。
(問25)
– Answer –
次の通りです。
- 保健所や地域の医師会が含まれます。
- 有事の際に速やかに連携できるよう、例えば、必要な情報やその共有方法について事前に協議します。協議した内容は記録する必要があります。
– Question –
外来感染対策向上加算及び感染対策向上加算3の施設基準において、「院内の抗菌薬の適正使用について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った他の医療機関又は地域の医師会から助言を受けること」とされていますが、具体的にはどのようなことですか。
(問26)
– Answer –
助言を受ける医療機関が、「中小病院における薬剤耐性菌アウトブレイク対応ガイダンス」における地域の感染管理専門家から、適切に助言を受けられるよう、感染対策向上加算1の届出を行っている医療機関や地域の医師会から、助言を受け、体制を整備しておくことをいいます。
【参考】中小病院における薬剤耐性菌アウトブレイク対応ガイダンス
- ・ 2019年3月に、感染症教育コンソーシアム「中小病院における薬剤耐性菌アウトブレイク対応ガイダンス作成チーム」によりリリースされました
- ・ 中小病院が、院内資源の多寡に関わらず必ず実施すべき、薬剤耐性菌アウトブレイクへの備え、 及びアウトブレイク発生時の効果的かつ効率的な対応を示すことを目的として作成されました
- ・ 概ね300床未満の感染防止対策加算を取得していない中小病院の施設管理者と感染対策担当者が主たる対象です
- ・ 院内において感染管理チーム(ICT)が組織されている場合には感染対策担当者をICTと読替えます
– Question –
外来感染対策向上加算及び感染対策向上加算(1,2及び3)の施設基準において、「新興感染症の発生等を想定した訓練については、少なくとも年1回以上参加していること」とされていますが、当該訓練とは、具体的にはどのようなものですか。また、当該訓練は対面で実施する必要がありますか。
(問27)
– Answer –
新興感染症患者等を受け入れることを想定した基本的な感染症対策に係るものであり、例えば、個人防護具の着脱の訓練が該当します。また、当該訓練はリアルタイムでの画像を介したコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な機器を用いて実施して差し支えありません。
– Question –
外来感染対策向上加算の施設基準において、「感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が定期的に主催する院内感染対策に関するカンファレンスに参加していること」とされていますが、当該カンファレンスの内容は、具体的にはどのようなものであればよいですか。
(問29)
– Answer –
具体的な定めはありませんが、感染対策向上加算1の届出を行っている医療機関は、地域の医師会と連携することとされていることから、感染対策向上加算1の届出を行っている医療機関が主催するカンファレンスの内容を参考として差し支えありません。なお、例えば、以下に掲げる事項に関する情報の共有及び意見交換を行い、最新の知見を共有することが考えられます。
- (例)
- 感染症患者の発生状況
- 薬剤耐性菌等の分離状況
- 院内感染対策の実施状況(手指消毒薬の使用量、感染経路別予防策の実施状況等)
- 抗菌薬の使用状況
- 「院内感染対策に関する助言」について、抗菌薬の適正使用に関する助言を行った場合も当該要件を満たすものとしてよいですか。
- 複数の医療機関と連携している場合、1施設につき1年間に4回以上助言を行う必要がありますか。
- よいです。
- 複数の医療機関と連携している場合には、複数の医療機関に対して助言を行った数の合計が過去1年間に4回以上であれば当該要件を満たすこととして差し支えありません。
– Question –
感染対策向上加算1に規定する指導強化加算の施設基準において、「過去1年間に4回以上、感染対策向上加算2、同3又は外来感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関に赴き院内感染対策に関する助言を行っていること」とされていますが、
(問30)
– Answer –
次の通りです。
– Question –
感染対策向上加算2及び同3に規定する連携強化加算の施設基準において、「過去1年間に4回以上、感染症の発生状況、抗菌薬の使用状況等について報告を行っていること」とされていますが、具体的にはどのような内容について、どのくらいの頻度で報告すればよいですか。
(問31)
– Answer –
報告の内容やその頻度については、連携する感染対策向上加算1の医療機関との協議により決定しますが、例えば、感染症法に係る感染症の発生件数、薬剤耐性菌の分離状況、抗菌薬の使用状況、手指消毒薬の使用量等について、3か月に1回報告することに加え、院内アウトブレイクの発生が疑われた際の対応状況等について適時報告することが求められます。