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Date:
2022.12.06
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学校におけるユニバーサルマスクの解除―生徒および職員間でのCOVID-19発生

掲載元:The New England Journal of Medicine(インパクトファクター 2021-2022 : 91.245)
掲載日:2022/11/9

今回は、マスク着用の有効性に関する新しいエビデンスが世界的権威の医学ジャーナル The New England Journal of Medicineに掲載されましたのでご紹介します。

2022年2月、米国マサチューセッツ州は公立学校における州全体のユニバーサルマスクポリシーを撤回し、多くの学区はその後数週間でユニバーサルマスクを解除しました。一方、解除後も学校内でのマスク着用義務化を継続していた学区がボストンおよびチェルシーの2学区ありました。そこで、マスク着用の義務化をやめた学区と、マスク着用を継続した学区で、COVID-19の発生状況に差が生じるかを検討したのが今回の論文です。

調査対象となったのは当該州の72学区、340,614 人の生徒と職員(294,084人の生徒、 46,530人の職員)でした。調査では義務化解除以降の15週間で、解除後もマスクを着用していた2つの学区と、解除した時期が異なるものの最終的にマスクの着用義務を解除した70の学区を比較しました。解除した70 の学区では、15週間中にCOVID-19に感染した学生および職員は1000人あたり134.4人、継続した2つの学区でのそれは1000人あたり66.1人でした。統計処理・分析により、COVID-19は解除によって学生と職員1000人当たり44.9人(95% 信頼区間/CI:32.6 ~ 57.1)増えたことになり、これは推定で11,901人(95%CI、8,651~15,151)でした。この数字は、対象期間中/対象地区で発生したCOVID-19の約30%に相当するとのことです。ちなみに、マスク着用を継続した学区の学校は、建物が古く、換気やろ過システムなどの条件が悪い傾向があり、また1教室当たりの生徒数が多い傾向もあったとのことです。

今回の結果は、地域社会において感染の機会が多い時期に、高性能のマスクやレスピレーターを用いたユニバーサルマスクが、SARS-CoV-2の蔓延および学校の欠席日数を最小限に抑えるための有効な手段であることを支持すると研究グループは結論しています。

これまで報告されてきたエビデンスにプラス、今回の論文の結果を考慮して、必要な時期のユニバーサルマスクの効果は裏付けられていると考えられます。一方で、学童に関しては、学習、コミュニケーションスキルおよび発達などへの影響を懸念する見解もあります(ただし、明確なエビデンスはまだ無いとのことです)。本論文の考察の中でも、学校におけるユニバーサルマスク政策は論争が多いため、批判を受けることが予想されるとコメントしています。今後の更なる研究、権威あるグローバル保健衛生機関の提言を参考に、学校とこれを取り巻くコミュニティによるフレキシブルな対応が、まだしばらくの間は求められるのではないでしょうか。

オリジナルリリース

米国の学区について;
米国では、初等教育と中等教育を行う公立学校を運営するために学区(school district)が設定されています。公立学校の多くは、運営を単一の市や町のためあるいは複数の町をまとめた地区のために作られた学区に委ねています。

モレーン学術グループ

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