2024年(令和6年)度診療報酬改定 感染対策分野情報 その2
概要
•2年に一度改定される診療報酬改定、2024年(令和6年)はまた診療報酬(医療)・介護・障害福祉サービス等の報酬改定が同時に行われる6年に一度のトリプル改定となるため、その規模や注目度は大きいです。
•個別項目の一つに「新興感染症等に対応できる地域における医療提供体制の構築に向けた取組」があります。2022年(令和4年)度に大きく改定された感染対策関連の要件・加算等の一部が更に改定されています。
•本サイトでは、2024年(令和6年)度診療報酬改定における感染対策分野関連の改定・新規事項をご覧いただけます。
- 感染対策向上加算及び外来感染対策向上加算の見直し
- 感染症の入院患者に対する感染対策の評価の新設/感染症の入院患者に対する個室・陰圧室管理の評価の拡充
- 抗菌薬の使用実績に基づく評価の新設
- 病態に応じた早期からの疾患別リハビリテーションの推進
1.感染対策向上加算及び外来感染対策向上加算の見直し
2022年(令和4年)度に改定された感染対策向上加算等では、当時その渦中であった新型コロナウイルス感染症への対応の重要性を踏まえて、「加算1はコロナ重点医療機関、加算2はコロナ協力医療機関、加算3・外来加算はコロナ診療・検査医療機関」という基準が示されました。
2024年(令和6年)度の診療報酬改定では、加算1〜3の感染対策向上加算の施設基準において第8次医療計画における協定締結の枠組みを踏まえた要件の見直しが行われています。具体的には、連携する介護保険施設等から求めがあった場合に現地に赴いての感染対策に関する助言を行なったり院内研修を合同で開催することが望ましい旨が追加されています。
また、外来感染対策向上加算では、同じく第8次医療計画により外来における適切な感染管理の下での発熱患者等への対応を更に推進する観点からの要件及び評価が見直され、適切な感染防止対策を講じた上で発熱患者等の診療を行った場合の加算が新設されています。
感染対策向上加算及び外来感染対策向上加算の施設基準
外来感染対策向上加算における発熱外来に対する評価の新設
(新) 発熱患者等対応加算 20点
[算定要件]
外来感染対策向上加算を算定する場合において、発熱その他感染症を疑わせる症状を呈する
患者に対して適切な感染防止対策を講じた上で診療を行った場合は、月1回に限り更に所定
点数に加算する。
感染対策に関する介護保険施設等との連携の推進
感染対策向上加算1における「感染制御チーム業務専属」とは、「抗菌薬適正使用支援チームの業務を行う場合」および「加算2、加算3、外来加算医療機関への助言業務を行う場合」と見なされてきましたが、新たに「介護保険施設等、指定障害者支援施設等からの求めに応じて当該介護保険施設等への助言業務」を行う場合も、「感染制御チーム業務専従」と見なすことができるようになりました。ただし、介護保険施設等での助言業務時間は、原則、月10時間以下とされています。
2.感染症の入院患者に対する感染対策の評価の新設/感染症の入院患者に対する個室・陰圧室管理の評価の拡充
2024年(令和6年)度の診療報酬改定では、より広範な感染症への院内感染の拡大を防止するために、「適切な感染拡大防止対策」を行う医療機関に対する新加算が設定されました。すなわち、感染管理が特に重要な感染症の患者に対して、適切な感染対策を講じた上で入院医療を提供した場合の加算です。
(新) 特定感染症入院医療管理加算
治療室の場合 200点
それ以外の場合 100点
[算定要件]
感染症法上の三類感染症の患者、四類感染症の患者、五類感染症の患者及び指定感染症の患者並びにそれらの疑似症患者のうち感染対策が特に必要なものに対して、適切な感染防止対策を実施した場合に、1入院に限り7日(当該感染症を他の患者に感染させるおそれが高いことが明らかであり、 感染対策の必要性が特に認められる患者に対する場合を除く。)を限度として、算定する。ただし、疑似症患者については、初日に限り所定点数に加算する。
[対象となる感染症]
狂犬病、鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く。)、エムポックス、重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る。)、腎症候性出血熱、ニパウイルス感染症、ハンタウイルス肺症候群、ヘンドラウイルス感染症、インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)、後天性免疫不全症候群(ニューモシスチス肺炎に限る。)、麻しん、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、RSウイルス感染症、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌感染症、感染性胃腸炎(病原体がノロウイルスであるものに限る。)、急性弛緩性麻痺(急性灰白髄炎を除く。病原体がエンテロウイルスによるものに限る。)、新型コロナウイルス感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症、水痘、先天性風しん症候群、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症、百日咳、風しん、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、無菌性髄膜炎(病原体がパルボウイルスB19によるものに限る。)、薬剤耐性アシネトバクター感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症及び流行性耳下腺炎並びに感染症法第6条第8項に規定する指定感染症
[対象の入院料]
一般病棟入院基本料、精神病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟及び精神病棟)、専門病院入院基本料、障害者施設等入院基本料、有床診療所入院基本料、救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、脳卒中ケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料、新生児特定集中治療室管理料、新生児特定集中治療室重症児対応体制強化管理料、総合周産期特定集中治療室管理料及び新生児治療回復室入院医療管理料及び特定一般病棟入院料
さらに、従来の「二類感染症患者療養環境特別加算」について、名称を特定感染症患者療養環境特別加算に見直すとともに、対象となる感染症及び入院料の範囲が拡大されました。
特定感染症患者療養環境特別加算
個室加算 300点
陰圧室加算 200点
[個室加算の対象となる感染症]
狂犬病、鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く。)、エムポックス、重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る。)、腎症候性出血熱、ニパウイルス感染症、ハンタウイルス肺症候群、ヘンドラウイルス感染症、インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)、麻しん、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、RSウイルス感染症、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌感染症、感染性胃腸炎(病原体がノロウイルスであるものに限る。)、急性弛緩性麻痺(急性灰白髄炎を除く。病原体がエンテロウイルスによるものに限る。)、新型コロナウイルス感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症、水痘、先天性風しん症候群、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症、百日咳、風しん、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、無菌性髄膜炎(病原体がパルボウイルスB19によるものに限る。)、薬剤耐性アシネトバクター感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症及び流行性耳下腺炎並びに感染症法第6条第3項に規定する二類感染症、同法同条第7項に規定する新型インフルエンザ等感染症及び同法同条第8項に規定する指定感染症
[個室加算の対象となる感染症]
鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く。)、麻しん、新型コロナウイルス感染症及び水痘並びに感染症法第6条第3項に規定する二類感染症、同法同条第7項に規定する新型インフルエンザ等感染症及び同法同条第8項に規定する指定感染症
[対象の入院料]
一般病棟入院基本料、結核病棟入院基本料、精神病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料、専門病院入院基本料、障害者施設等入院基本料、有床診療所入院基本料、特殊疾患入院医療管理料、小児入院医療管理料、回復期リハビリテーション病棟入院料、地域包括ケア病棟入院料、特殊疾患病棟入院料、緩和ケア病棟入院料、精神科救急急性期医療入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科救急・合併症入院料、児童・思春期精神科入院医療管理料、精神療養病棟入院料、認知症治療病棟入院料、精神科地域包括ケア病棟入院料、特定一般病棟入院料、地域移行機能強化病棟入院料及び特定機能病院リハビリテーション病棟入院料
3.抗菌薬の使用実績に基づく評価の新設
2024年(令和6年)度診療報酬改定では、サーベイランス強化加算が見直されました。
これまで、感染対策向上加算2及び3を取得している医療機関において、「JANIS/厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業]、「J-SIPHE/感染対策連携共通プラットフォーム」等のサーベイランスに参加する場合にサーベイランス加算が上乗せされていましたが、今回の改定で現行の5点から3点に見直しが入りました。一方、抗菌薬適正使用を更に促進する観点から、外来感染対策向上加算及び感染対策向上加算に抗菌薬適正使用加算が新設されました。
これは、日本は世界保健機関(WHO)が提唱するAccess抗菌薬 ※ の使用比率がまだ低い現状が背景にあります。
(新) 抗菌薬適正使用体制加算 5点
[施設基準]
(1)抗菌薬の使用状況のモニタリングが可能なサーベイランスに参加していること。
(2)直近6か月において使用する抗菌薬のうち、Access抗菌薬に分類されるものの使用比率が
60%以上又はサーベイランスに参加する医療機関全体の上位30%以内であること。
※ Access抗菌薬:2019年6月、WHOが抗菌薬使用量から抗菌薬適正使用を判断するための打ち出した指標です。抗菌薬が“Access”、“Watch”、“Reserve”、3つのカテゴリーに分類されており、 “Access”に分類される抗菌薬は、一般的な感染症の第一選択薬または第二選択薬として用いられる耐性化の懸念の少ない抗菌薬とされています。
4.病態に応じた早期からの疾患別リハビリテーションの推進
2024年(令和6年)度診療報酬改定の中で、リハビリテーションに関連した評価の見直しがあり、その中で記された対象患者の一つに、二類感染症や新型インフルエンザ等感染症の患者が規定されています。今回の改定で、重症患者に対して入院早期からのリハビリテーションを推進するため、「急性期リハビリテーション加算」が新設され、「早期リハビリテーション加算」の評価が見直されました。「急性期リハビリテーション加算」の新設は、重症患者の病態に応じて早期からリハビリテーションを提供を促進することが目的とされています。
(新) 急性期リハビリテーション加算 50点(14日目まで)
(改) 早期リハビリテーション加算 30点→ 25点(30日目まで)
※ 心大血管疾患等リハビリテーション料、脳血管疾患リハビリテーション料、
廃用症候群リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料、
呼吸器リハビリテーション料において算定可能。
[急性期リハビリテーション加算の対象患者] ※入院中の患者に限る。
ア ADLの評価であるBIが10点以下のもの。
イ 認知症高齢者の日常生活自立度がランクM以上に該当するもの。
ウ 以下に示す処置等が実施されているもの。
①動脈圧測定(動脈ライン) ②シリンジポンプの管理 ③中心静脈圧測定(中心静脈ライン)
④人工呼吸器の管理 ⑤輸血や血液製剤の管理 ⑥特殊な治療法等(CHDF、IABP、PCPS、
補助人工心臓、ICP測定、ECMO)
エ 「A220-2」特定感染症入院医療管理加算の対象となる感染症、感染症法第6条第3項に規定する
二類感染症及び同法同条第7項に規定する新型インフルエンザ等感染症の患者及び当該感染症を
疑う患者。ただし、疑似症患者については初日に限り算定する。
[急性期リハビリテーション加算の施設基準]
当該保険医療機関内にリハビリテーション科の常勤医師が配置されていること。