2022年(令和4年)診療報酬改訂の概要と疑義解釈【歯科】
■ 歯科外来診療における感染防止対策の推進
歯科外来診療においては、日常的に唾液もしくは血液に触れる環境下で多くの機器・器具を使用しています。また、歯を削るなどの治療手技に伴い、飛沫やエアロゾルが発生する可能性があるためその対策や機器・器具の適正使用が肝要です。
歯科における2022年(令和4年)の診療報酬改定では、新型コロナウイルス感染症パンデミックの経験をもとに歯科医療機関において院内感染防止対策を推進する観点から、歯科初診料及び歯科再診料の引上げを行うとともに、院内感染防止対策に関する施設基準についての見直しが行われました。
■ 新たな感染症を踏まえた歯科診療の指針
歯科医療機関における感染予防策(抜粋)
公益社団法人日本歯科医師会「新たな感染症を踏まえた歯科診療の指針」(令和3年11月)
【診療に関する留意点】
- 診療室内のエアロゾル対策:吸引装置の適正使用
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口腔内での歯科用バキュームの確実、的確な操作を行う
口腔外バキューム(口腔外吸引装置)の活用も望ましい
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口腔内での歯科用バキュームの確実、的確な操作を行う
- 手袋、ゴーグルまたはフェイスシールドについて
- 手袋は患者ごとに交換
エアロゾルへの対策としてゴーグルまたはフェイスシールドを装着
- 手袋は患者ごとに交換
- 歯科用ユニット、周囲、その他接触部位の消毒
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患者が触れた部位および触れた可能性のある高頻度接触部位に対しては、 抗ウイルス作用のある消毒剤を含有させたクロスを用いての清拭
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患者が触れた部位および触れた可能性のある高頻度接触部位に対しては、 抗ウイルス作用のある消毒剤を含有させたクロスを用いての清拭
- 治療前後の含嗽(口、喉のうがい)
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患者に治療開始前に洗口薬で含嗽(ポビドンヨード、CPC)してもらい、口腔内の微生物数レベルを下げることも飛沫感染対策として有効
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患者に治療開始前に洗口薬で含嗽(ポビドンヨード、CPC)してもらい、口腔内の微生物数レベルを下げることも飛沫感染対策として有効
【診療環境に関する留意点】
- 密集回避のため、予約間隔や使用ユニットの調整
- 定期的な窓開けによる換気の徹底
- 受付においても、常時マスク、ゴーグルやフェイスシールドの着用
- 患者来院時の手指消毒の徹底
○ ポビドンヨード製剤等で含嗽をした場合、唾液中のウイルス量が減少するため、歯科診療の実施前の含嗽が推奨される。
(出典:Antiviral mouthwashes: possible benefit for COVID-19 with evidence-based approach. Mahdieh-Sadat Moosavi,a Pouyan Aminishakib,b and Maryam Ansaric. J Oral Microbiol. 2020; 12. )
○ COVID-19患者においては、1%ポビドンヨード製剤で1分間、含嗽をした場合、3時間、唾液中のウイルス量が減少した。
(出典:Martinez Lamas L et al, Is povidone-iodine mouthwash effective against SARS-CoV-2? First in vivo tests. Oral Dis, 2020. doi: 10.1111/odi.13526)
■ 歯科診療における院内感染防止対策の推進
基本診療料の施設基準及び評価の見直し
- 歯科外来診療における院内感染防止対策を推進し、新興感染症にも適切に対応できる体制を確保する観点から、歯科初診料における歯科医師及び職員を対象とした研修等に係る要件を見直すとともに、基本診療料の評価を見直す。
[経過措置] 令和4年3月31日において、現に歯科点数表の初診料の注1の届出を行っている保険医療機関については、令和5年3月31日までの間に限り、1の(3)及び (4)の基準を満たしているものとみなす。ただし、令和3年4月1日から令和4年3月31日の間に(3)の研修を受講した者については、当該研修を受けた日から2年を経過する日までは当該基準を満たしているものとみなす。
【参考】歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準
・令和4年 A000初診料 1 歯科初診料の注1として下記の記載があります
・歯科外来診療における院内感染防止対策につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、初診を行った場合に算定する。この場合において、当該届出を行っていない保険医療機関については、240点を算定する。
■ 歯科診療報酬点数表関係 疑義解釈 その1
– Question –
保険医療機関における感染対策向上加算について、感染対策向上加算の注3に規定する連携強化加算及び注4に規定するサーベイランス強化加算についても、それぞれの算定要件を満たす場合、歯科点数表において算定可能ですか。(問3)
– Answer –
算定は可能です