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Date:
2024.09.11
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CLEEN研究&サブ研究:クリネル ユニバーサルワイプを使用した研究報告

今回は、2024年8月13日に、The Lancet Infectious Diseasesに掲載された「オーストラリアの医療施設における共有医療機器の洗浄・消毒の強化が医療関連感染(HAI)に与える影響の調査 (CLEEN研究): 段階的介入クラスターランダム化比較試験」と同年8月16日に、Journal of Hospital Infectionに掲載された「清掃時間と動作研究:医療施設で共有医療機器の効果的な清掃に必要な時間に関する観察研究」をご紹介いたします。

オーストラリアの医療施設で実施された画期的な研究が、共有医療機器の洗浄・消毒の強化により医療関連感染(HAI)が34.5%減少することを明らかにし、医療現場の感染対策に新たな指針を示しています。
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オーストラリアの医療施設における共有医療機器の洗浄・消毒の強化が医療関連感染(HAI)に与える影響の調査 (CLEEN研究): 段階的介入クラスターランダム化比較試験

掲載元:The Lancet Infectious Diseases
オリジナルリリース
掲載日:2024/8/13

研究背景と目的
オーストラリアの医療施設における、院内で様々な患者に使用される医療機器(以下、共有医療機器)の洗浄・消毒の強化が医療関連感染(HAI)に与える影響を調査した研究についてご紹介します。この研究は、段階的介入クラスターランダム化比較試験として実施され、徹底的な衛生管理がいかに重要であるかを示す証拠を提供しています。
クリネル ユニバーサルワイプを使用し、共有医療機器の洗浄・消毒を強化すると、医療関連感染 (HAI) が 34.5% 減少しました。この画期的な成果は、医療従事者が感染予防において洗浄・消毒の実施手順の重要性を再認識し、その理解を深めることに役立つでしょう。
研究概要
本研究は、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州にある大規模公立病院の10病棟で
行われました。期間は2023年3月20日から11月24日まで36週間で、5002人の患者が対象となり、介入群と対照群に分けられました。
介入内容
研究では、オーストラリアの医薬品・医療機器規制当局に登録された清拭・消毒ワイプ(ク
リネル ユニバーサル、クリネル スポリサイダル)を使用しました。専任の清掃員が、平日3時間、共有医療機器の洗浄・消毒を行い、清掃スタッフには継続的な教育、監査、フィードバックが行われました。
主な結果
介入の結果、HAIのリスクは相対的に34.5%減少、絶対的に5.2%減少しました。これらの効果は、統計的に有意であり、洗浄・消毒の重要性を再認識させるものとなりました。
結論
この研究は、共有医療機器の洗浄・消毒を改善することで、HAIが有意に減少することを
明確に示しています。これは、すべての医療施設で実施可能なアプローチであり、既存のリ
ソースを活用しつつ、洗浄・消毒のプロセスを改善するための実践的な解決策となります。
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(サブ研究)
清掃時間と動作研究:医療施設で共有医療機器の効果的な清掃に必要な時間に関する観察研究

掲載元:Journal of Hospital Infection
オリジナルリリース
掲載日:2024/8/16 

研究背景と目的
病院の汚れた環境は、患者に病気をうつす原因になることがあります。病原菌は病院の中で長い間生き残り、そこから患者にうつる可能性があります。にもかかわらず、院内で様々な患者に使用される医療機器(以下、共有医療機器)を清拭・消毒することが、病院内の感染を減らすのにどれだけ効果があるのか、まだよくわかっていません。
最近、共有医療機器の清掃と消毒を改善すると、医療関連感染(HAI)がどれだけ減るかを調べる研究(CLEEN試験)が行われました。この研究では清掃がきちんと行われているかを見ていましたが、それにかかる時間は測っていませんでした。
世界中のガイドラインで環境の清掃が大切だと言われていますが、共有医療機器を手で効果的に清掃にどのくらい時間がかかるのか、まだよくわかっていません。この研究の目的は、いろいろな種類の共有医療機器をきちんと洗って消毒するのに、どれくらい時間がかかるかを調べることです。
方法
オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の看護シミュレーション病棟で4時間にわたって実施されました。参加者は1時間のトレーニングを受けた後、院内で様々な患者に使用される共有医療機器の清掃を行いました。清掃の効果は、紫外線蛍光マーカーの80%以上が除去されたかどうかで判断しました。清掃用品は、オーストラリアの医薬品・医療機器規制当局に登録された清拭・消毒ワイプ (クリネル ユニバーサル、クリネル スポリサイダル)を用いて、装置メーカーの指示に従って装置を洗浄しました。
主な結果
共有医療機器を効果的に洗浄するのに必要な時間の平均、範囲、ばらつきを調べるために、デIBM SPSSという統計ソフトを使ってデータを分析しました。すべての共有医療機器は、4分以内にきちんと清拭・消毒できました(表1)。血糖検査キットは最も早く(40秒〜1分)、薬剤カートは最も時間がかかりました(3分36秒〜4分11秒)。

表I .病院の共有医療機器を効果的に洗浄するのに必要な時間。*n = 10
注: 80%の清掃基準を満たした時点で評価しました。

また、点滴スタンドが一番きれいに清拭出来100%の効果がありましたが、膀胱スキャナは12回も洗わないと基準の80%に達せず、平均で76%(67%〜85%の間)の効果しかありませんでした。

研究の意義と今後の展望
この研究では、実際の病院の状況に近づけるよう工夫しました。参加者には急がずに丁寧に清掃するよう伝え、病院での清掃スタッフと同じような訓練を行いました。あらかじめ用意した清拭・消毒ワイプを使って、清拭時間だけを測りました。世界中のガイドラインでは、あまり重要でない共有医療機器は、患者が使っている間に洗ったり消毒したりすることが推奨されています。これまでの研究では、誰が清掃すべきかはっきりしておらず、忙しい病棟では後回しにされがちであること、オーストラリアの看護師及び助産師への調査では、清掃が大切だとわかっていても、どの製品を使い、どうやって清掃し、誰が担当するのかが不明であること、清掃の有効性を評価した研究では、看護師は訓練を受けた専門の清掃スタッフほど効果的に清掃できていないことが示されています。
共有医療機器120個(共有医療機器12個を10回洗浄)を清拭・消毒するまでに累積時間は、4時間41分58秒かかりました。これは、使うたびに清掃するにはかなり時間がかかることを示しています。この研究は、共有医療機器の清掃にかかる時間について、病院に重要な情報を提供しています。清掃徹底を強化し、維持するためには、定期的な研修、監査及びフィードバックが必要で、この情報は医療機関が清掃計画を立てる際や、リソース配分を検討する際に役立つ実用的なデータとなります。ただし、実験室での結果なので、実際の病院ではもっと時間がかかる可能性があります。共有医療機器をきちんと清拭して消毒するには、適切な訓練と十分な時間が必要です。この研究結果は、共有医療機器を含む清掃介入の費用対効果評価にも役立つでしょう。

モレーン学術グループ

モレーンコーポレーションの学術グループです。最新の感染関連情報をお届けいたします。