医療関連感染を減らすために、清潔を保つ
英国GAMA Healthcare R&D のブログより転用
2024年10月4日
研究/RESEARCH
医療関連感染症(HAI)は世界中の医療施設にとって大きな懸念事項であり、患者の罹患率、入院期間の延長、医療費の増加につながっています。国際感染予防週間 (IIPW:International Infection Prevention Week)2024*に向けて、HAIの発生率を効果的に減少させるための戦略に焦点を当てましょう。最も影響力がありながら、見過ごされがちな戦略の一つが、環境の清掃と消毒です。
*国際感染予防週間2024:10月13日から19日まで開催されます。この週間は、1986年に設立され、毎年 10月に感染予防の重要性を強調することを目的としています。2024年のテーマは「Moving the Needle on Infection Prevention」で、感染予防の改善を目指しています。
清掃強化の威力: CLEEN研究からの考察
最近の研究では、医療現場での感染拡大を予防するうえで、清掃が果たす重要な役割が重視されています。オーストラリアのある病院で行われた画期的なランダム化比較試験であるCLEEN研究では、共有医療機器をクリネル ユニバーサル ワイプで清掃することにより、HAIが34.5%減少したことが明らかになりました1。この大幅な減少は、徹底した清掃手順がスタッフと患者の安全に多大な影響を与えることを示しています。
CLEEN研究の結果から、医療施設は清掃方法を見直す必要があるといえます。特に、高頻度接触面や共有医療機器について、強化された清掃手順、監査、スタッフのトレーニング、教育への投資を取り入れることで、医療チームは医療関連感染症のリスクを大幅に減らすことができます。
清掃手順の現実的な影響
清掃の改善の有効性は、単なる理論上の話ではありません。これは、積極的な感染予防策により感染率が大幅に低下した実例で実証されています。例えば、Birmingham大学病院では、クリネル ユニバーサル ワイプを用いた2-in-1清掃ルーチンを導入し、MRSA感染症の発生率が55%減少しました。シンプルな清掃ルーチンが、MRSAのような難治性感染症の伝播を減少させる上でいかに大きな影響を与えるかを示しています2。
Shamir 医療センターでは、クリネル ユニバーサル ワイプのディスペンサーを患者のベッドサイドに設置することで、より頻繁かつ効果的な清掃が可能になりました。この変更により、院内死亡率が20%減少しました。これは、使用しやすく一貫した清掃リソースが患者を保護し、命を救う上で、重要な役割を果たすことを明らかにしています3。
別の事例では、NHS Lanarkshireが、高頻度接触面の清掃を標準化し、クリネル ユニバーサ ワイプを使用してマットレスの洗浄時間が10分以上から6~10分に短縮しました。この効率化により、時間が節約されるだけでなく、全体的な感染予防の取り組みも強化されます4。
感染予防の合理化
・ IPC教育*プロトコルポスター:これらのポスターをダウンロードし、明確で一貫した清掃ガイドラインをすべてのスタッフに共有し、ベストプラクティスを日常業務に取り入れ、IPCを改善します。
*IPC教育: 感染予防および管理(Infection Prevention and Control)を指します。
・ スタッフの参加とトレーニング:Clean Between Playing Cardは、IPCトレーニングを魅力的で楽しくするものにし、すべてのチームメンバーがベストプラクティスを強化するために連携できるようにします。
・ 専門家から学ぶ: 2024年10月15日に開催されるウェビナー「IPC の卓越性の向上:影響力とコンプライアンスのための戦略」では、IPCの専門家であるMartin Kiernan教授が、コンプライアンスを強化し、HAIを減少させるための戦略を共有します。
→すでに、終了しております。
リソースにアクセスしてください。
HAIとの戦いは続いていますが、適切なツールと戦略により、医療施設はこれらの感染を大幅に減少させることができます。教育リソースと魅力的なトレーニングツールによってサポートされる強化清掃手順は、包括的な感染予防戦略の不可欠な要素です。国際感染予防週間IIPW2024が近づくにつれて、医療チームは、これらのリソースを活用し、患者、入居者、スタッフを保護し、命を救う徹底した清掃活動に取り組むことが推奨されます。
参考文献
1. Browne, K., White, NM, Russo, PL, Cheng, AC et al. “Investigating the effect of enhanced cleaning and disinfection of shared medical equipment on health-care-associated infections in Australia (CLEEN): A stepped-wedge, cluster randomised, controlled trial” The Lancet Infectious Diseases. Advance online publication. 2024
2. Garvey, M. I., Wilkinson, M. A. C., Bradley, C. W et al. “Wiping out MRSA: Effect of introducing a universal disinfection wipe in a large UK teaching hospital” Antimicrobial Resistance & Infection Control.vol7(1). 2018.p.155
3. Dadon, M.Chedid, K.Martin, E. T et al. “The impact of bedside wipes in multi-patient rooms: A prospective, crossover trial evaluating infections and survival”. Journal of Hospital Infection.vol134.2023.p.50‐56
4. Shepherd, E., Leitch, A., Curran. “A quality improvement project to standardise decontamination procedures in a single NHS board in Scotland”. Journal of Infection Prevention.vol21 (6).2020.p.241‐246